デンソーレトロフィットキットとデイトンPOEプラスで

初代サイノス(EL44型)エアコンレトロフィット修理


 平成19年の夏は暑いですねぇ…と、そんな中、我が妹のサイノス号(初代・EL44型・H3年式)のエアコンが壊れました。この年式のトヨタ車では、ある意味「お約束」的なトラブルですが。

 街中を走る、サイノスのベース車であるEL4#系のターセル・コルサ・カローラU(全てひっくるめて「ターコルU」とする)の大多数が窓開け走行しています。多分、エアコンが壊れています(間違いなく壊れている)

 このクルマ、車体色がブラックのために太陽サンサンだと車内温度急上昇!しかも絶滅危惧種であるR12ガス対応。兄として不憫で見てられません(というよりレトロ化の実験台…内緒)

 これを機に、値上がり一方のR12ガスとオサラバ、漏れても安い(漏れてはいけませんが)R134aガス対応…レトロフィット化(というよりも安く上げた…内緒)を画策しました。以下はレポートです。

 なお、同年式のターコルUについては(エアコンがオートかマニュアルかの違いと、ターコルUとサイノスではサクションホースの取りまわしが若干異なる)構造は共通、また、R12ガス採用の古いカローラ系・「エアコンは生命維持装置」の迷車セラ・トヨタ以外のデンソーエアコン採用の国産車などの、レトロフィットの有効な資料としても活用されてください。

注)

  1. 当ページは、エンジン室の部品脱着を多く行います。更に、エアコンの動作原理も必要です。ご自分で行う場合は、それ様の知識・経験・工具のある方が自己責任において行って下さい
  2. 当ページは、トヨタ初代サイノス(EL44型)の作業の代表例を紹介するものであり、他車への作業の適用については自己判断で行ってください
  3. エアコンガスサイクルの主要部品(コンプ・エバポ・コンデンサ・レシーバ)は、原則新品かリビルト品を使用してください。一般的に前掲の部品に中古品を用いると、再トラブルになりやすいといわれています
  4. 地球環境保護のためにも、R12ガスが大量に残っている場合は、きちんと回収しましょう
  5. ガスサイクルは、長時間空気に晒したりゴミが入らないように、外したら盲栓をつけましょう。ガスサイクルは水分・ゴミを嫌います
  6. 一旦外したOリングは再使用できません(再使用すると漏れます)必要数のOリングを用意してください。配管再取付の際は、Oリング部にコンプレッサオイルを塗布しながら組み立てます
  7. 当ページの内容を行った場合に生じた不具合等については、作者は責任を負いかねます

その1 症状と修理方針

 症状…冷えません。A/Cボタンを押してもランプが光るのみでコンプレッサが働きません。お約束の生ぬる〜い風が吹いてきます(笑)

 エアコンアンプなどを見てみましたが…?ご近所の修理屋さんでは「エバポ辺りの詰まり」という話ですが、この年式のトヨタ車では比較的多いとされる「エバポユニットからの漏れ」が怪しい。

 このクルマは車検を取ったばかりなので、年式を考慮して向う2年程度持てば良しとします。

 念のため、主要部品であるエバポユニットA'ssyとコンプレッサを(サイノス狙いではなかなか見つからないので同式のターコルU)解体屋から調達するとします(予算が予算なので)

表:レトロフィットの各種方式

改修(修理)方式

メリット

デメリット

以下の冷媒サイクル全交換(新品・リビルド品・一部洗浄再利用)
  • コンプレッサ
  • コンプレッサオイル(コンプレッサメーカの指定オイル)
  • 配管
  • エバポ
  • エキスパンションバルブ
  • コンデンサ
  • レシーバドライヤ
  • Oリング
  • チャージングバルブ
  • 最も確実で安心
  • クルマを永く乗る場合には良い
  • 改修(修理)費用が嵩む
  • 旧いクルマだと部品入手が困難
  • (旧車の場合)入手した部品がR134に対応するかどうかも問題
上記から、漏れや不具合状況、予算に応じた冷媒サイクルの部分交換、コンプレッサオイルをR12・134a兼用品(社外品)に交換、チャージングバルブ・レシーバドライヤ交換
  • 上記よりは、やや安価
  • デンソー製や一部外車にはレトロ対応部品がある
  • エアコンの修理は必要だが、さほどクルマは永く乗る気が無い場合の選択肢
  • 漏れ場所を特定してからの修理の為、診断の必要性がある(但し、バブル末期に製造されたトヨタ車の殆どが、エバポA'ssyに問題がある)
  • 信頼性は若干劣る
  • 流用した部品がR134に対応するかどうかも問題
チャージングバルブを交換し、レトロフィット専用ガスを注入する
  • 大きな修理(=漏れ)が必要ない場合は、簡単
  • 注入するだけで完了
  • 自然にガスが抜けきっている場合、エキスパンションバルブの不具合は、大概分解修理が必要であり、本方式の対象外
  • コンプレッサシャフトからの漏れには使用してはならない

 レトロフィットする機会として、現状のエアコンが故障して(不調になり)修理のついででが良いでしょう。R12ガスでまだ冷えている状態のエアコンを、ガス回収して無理にレトロフィットするする必要性は無いと思います。

 最もたちが悪いのは、漏れていると解っていてR12ガスを充填し続けることかと思います。地球環境に優しくないですし、何よりガスと一緒にコンプレッサオイルも抜けていることも問題です(コンプオイル抜け→コンプ焼きつき→お財布を直撃)ここまで来ると、エバポも相当汚れていて臭いもあるはずです。


 

その2 部品確保

 エバポユニットとコンプレッサですが、丁度解体屋(当地春我部ではお馴染みのT林解体)に出向いた所にEL41型ターセルセダンが、これから解体作業に入ろうとしていました。無論、解体屋のオッチャンに剥ぎ取りを申し出。

ドナー車EL41ターセル。ボディに書かれた車台bノ注目

 このクルマ、年式の割に走行距離なんと1万キロ。次いででパワステポンプも剥ぎ取り(コンプレッサ取り外すのにどうせ外さなくてはならないので)

ターセルのエアコンユニット(中央の黒い箱)

グローブボックスを取り外せば、直ぐ拝めます。

車内はキレイそのもの。サイノスよりキレイだったりして(笑)

戦利品

左からエアコンコンプ、エバポレータA'ssy、パワステポンプ

 今回のレトロ化最大のキーパーツは、「デイトンPOEプラス」なる、R12・R134a兼用、R12の鉱物系とR134aの化学合成系オイルに相溶性のコンプレッサオイルです。こちらで入手しました。1g缶で¥9,800也と割高。今回は200cc位しか使わないのでかなり不経済(吸湿性が高い)余りをどうするか…

これがデイトンPOEプラス。缶には「Ultimate Conplessor Oil」、つまり「究極のコンプレッサオイル」ホンマかいな?

 デンソーの「レトロフィットキット」ですが、丁度うちの近所にトヨタ共販店があるので、そちらから入手。デンソー製品でこの製品の扱いが少ないのか、窓口のお姉さんは怪訝そうな顔をしました。窓口のお姉さんの勧めで、サクションホースとディスチャージホースも注文。勿論、Oリングも。

 ここで閑話休題…「レトロフィットキット」と言いますが、キットの同梱品だけでレトロ化は絶対無理なのに、何故に「キット」などという紛らわしい商品名をつけるのでしょう。最低でもコンプレッサオイルやOリング4種セットもつけるべきでしょう。車種によってはリビルトコンプも。


その3 施工

  1. 中古エバポA'ssyの清掃・再組

さて…剥ぎ取った中古エバポA'ssyも漏っていました(赤丸部…がっかり)

エキスパンションバルブの合わせ目からでしょう。(適当)

エキパンとエバポは、六角ネジで(堅く)止まっています。エキパンを外して、エバポのガス口を塞いでエアコン洗浄剤やら台所洗剤やらブレーキクリーナで清掃。

油分やら草のゴミが大量に流れてきた。

これがエキスパンションバルブ。

本体に「HFC」と記されていたので恐らくR134a対応品であろう。

きれいになった。当分は臭くないだろう(笑)

エキパンのOリング4枚と圧力スイッチのOリング、必ず交換します。

  1. エバポA'ssy交換

前述のターセルの画像の通り、エアコン部はまんまの共通部品であります。
エバポA'ssyを外す前に、エンジン室側の配管ナットを緩めておきます。

漏れたコンプレッサオイルが、エンジン室までだいぶ伝ってきています。

配管損傷防止のためにレンチは必ずダブルでかけましょう。

配管に辿り着くには、エアクリーナボックスを取り外しておきます。

外れたエバポA'ssy。

お約束のガス漏れです。

作業風景。

エバポA'ssyが外れてがらんどうの状態。

ぬいぐるみのオプション装着が女の子車を物語る(笑)

  1. 配管各部のOリング交換、レシーバユニット交換、チャージンクアダプタ取付

エンジン室内の各配管のOリングを取り替えます。

これは圧力スイッチ。

レシーバユニットの交換には、左ヘッドライトを取り外す必要があります。
レトロキット同梱の説明書に従い、R12の虫バルブを外し、その上からR132a用のチャージングアダプタを締め込みます。

虫バルブは、タイヤの虫回しで回ります。

  1. コンプレッサ取り外し、オイル抜き

コンプレッサを外すには、上にあるパワステポンプから外さないと駄目です。このパワステポンプのテンショナボルト、緩めるのが大変です。各自工夫して緩めてください。

パワステポンプのブラケットも外せば、上からコンプレッサが持ち上げられます。

コンプレッサを横にして、オイル抜き。ちょっとしか出てこない。ブレーキクリーナ吹いて、こびりついたエンジンオイルを清掃。

  1. サクション・ディスチャージホースの交換

サクションホースを上から外すには、電動ファンをずらします

(ラジエータホースがあるから外れない)

ディスチャージホースを外すには、右ヘッドライトを外す必要があります。
  1. コンプレッサ取り付け、オイル補充

コンプレッサオイルを150cc補充します。補充はD側(吐出側;赤四角)から。

新しいホースが、眩い光を放っている(笑)

  1. 真空引き、ガス充填

ご近所の修理屋さんで行いました。

マニホルドゲージと真空ポンプを接続、真空ポンプがカタカタと壊れそうな音を立てながら、真空引きの終了を待ちます。

ガス充填。緊張の瞬間です。500gオーダーしました。結果として…500gはペロリ(笑)

  1. 性能チェック

コーションラベルを貼り付けて完成。晴れてレトロフィット実施車の仲間入りを(ただケチッて車買い換えないだけ)果たしたこととなる。

予想より冷えます。コンプレッサから少し音がしますが(!)やれやれ。

どれだけ持つかが問題。


今回の交換パーツ

ふと思ったのですが…バブル末期に製造されたトヨタ車に乗っていた多くのユーザが、実は知らぬうちにR12を吸いつづけている。R12吸引と健康被害の関係は解りませんが…


初版:2007-9
修正:2008-7

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